
虞犯少年
第22章 見えないから残酷に響く
「こっち来い」
少しあけた距離も簡単に無くなる。
後ろからギュッと抱きしめられ背中に感じる肌に自然と体に力が入る。
緊張してるんだ。
エコーがかかったような甘い声で私の名前を呼んで、その唇は肩や首に触れる。
ドキドキしてるのは私だけ?余計悔しい。
こうやってゆっくり時間を共有した事なんて今までなかっただろう。嵐の考えてる事なんて私にはやっぱり理解出来ない。
それでも肌に直接伝うものが確かだった。
「どうしようもねぇ」
「ん?」
「明日香の事になると何も考えらんねーし、どうすればお前が喜ぶかとかお前の事なら全て知っときたい。抱いても足んねー」
「……嵐」
「こんなん初めてだ」
「―――初めて?」
「あぁ。明日香が最初で最後」
私が初めて。さっき感じた苛つきが薄れていく。
響く掠れた声は私の脳内を刺激した。
気のせいかもしれないけど、嵐の心臓も私と同じくらいドキドキいってる気がして体に入ってた力も少し緩む。
