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迷霧

第3章 3

「つまり、ここはゴーストタウンってことやな!」

「朱里ちゃん、正解」

「ほなら、勝手にトイレ借りてもええよな! もう我慢できひんねん!」


 え……そこかよ。
 オレは思わず吹き出してしまった。張り詰めていた空気が一気に和やかムードになる。


「じゃあ先にトイレを探そうか。紙があることを祈りながらね」


 昭さんも冗談を交えながら、次の民家の玄関の鍵を確かめる。


「あ……開いてる」

「!」


 いきなりすんなり開いてしまったことに、オレは少し戸惑った。なぜなら廃村ということで、また別の恐怖を思い浮かべてしまうからだ。


「……入ってみるか」


 昭さんもゴクリと喉を鳴らしたとき、


「トイレ、トイレ~!」


 朱里さんはなんの躊躇もなく、慌てて家の中に入って行った。
 よほど緊急事態だったんだろう、オレはまた笑いが込み上げてきた。


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