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迷霧

第3章 3

「いないみたいだねぇ、鍵もかかってるし」


 誰もいない? じゃあさっきのは……。
 オレは再度二階の窓を確認してみたが、さっきみたいにカーテンが揺れることはなかった。


「んじゃ、次はこっち。まあ、99%いないと思うけどね」

「え、なんでですか?」

「たいていの田舎なら、隣近所によそ者が訪ねてきたら外に出てくるでしょ。小野さんちなら今出かけてるよ~ってさ。だけども僕らがこんなに騒がしくしてるのに、人一人出てこない。だからこの集落には、もしかすると人は住んでないかもしれないと思うんだ」


 「それに……」と言葉を続けたあと、昭さんは右手の甲をオレたちに見せた。


「少し叩いただけで埃がこんなに……何年も家を野ざらしにしてた証拠だよ」


 オレはもう一度あちこち周りを見渡してみた。確かに窓は埃で白く濁っているし、少し亀裂も入っている。玄関回りや庭も雑草が生えていて、全く手入れがされていない感じだった。


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