テキストサイズ

迷霧

第4章 4

 オレと昭さんはマネキンをゆっくりと床に下ろすと、仰向けに寝かせた。
 ぶら下げておくのも気持ち悪いけど、こうやって寝かせておくのも気持ち悪い……。しかもマネキンの首もとはロープの跡がついて黒ずんでいた。


「何か布を……」


 オレは大きな布がないか部屋中を見渡した。
 布をかけておけば、誰かがまたこの部屋に入った時に死体だと間違うこともないだろうと思ったからだ。


「なんで、隠そうとするん?」

「えっ……」


 いつの間にかすぐ隣に朱里さんの顔があってギクッとした。なぜか朱里さんの目は据わっている。


「さて、そろそろ次の家を調べましょうか。約束の時間まであと少しですし」

「せやな、他にも何かあるかもしれへんし」


 朱里さんはなに食わぬ顔をしてカツラをマネキンの頭に戻した。
 その様子を後ろから見てると、


「ほな、行こか!」


 いきなり超満面の笑顔で振り返ってきた。
 テンションがもとに戻ってる。
 一体なんなんだ、この人は……。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ