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迷霧

第4章 4

 昭さんはそのサバイバルナイフを折り畳んで、自分のズボンのポケットにしまった。そしてオレにマネキンの下半身を支えるよう言ってきた。


「あっ……」


 その時、ズルッとマネキンのカツラが床に落ちた。それを朱里さんが拾う。


「……なぁ、うち誰かに似てると思わへん?」


 朱里さんは何を思ったのか、そのカツラを自分の頭にかぶせた。


「え、誰かって……」


 誰か芸能人に似てるってことか?
 このタイミングでそんなふざけたことを聞くなんて、逆に朱里さんが怖くなった。


「そうですねぇ……女優の南川景子に似てるかな」


 昭さんが朱里さんのノリに付き合う。


「ほんまに~? 嬉しいわぁ」


 喜ぶ朱里さん。だけど、目は笑っていない。


「うちの妹もな、よく南川景子に似てるって言われてたんよ」

「……」


 妹の話はまだ終わってなかったようだ。
 朱里さんはカツラの長い髪を指に巻き付けて遊んでいる。


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