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MAY 💙Love
第1章 終業式
文月の空を見ていると「栗原さん」担任に呼ばれた。私はうつむきがちに廊下に向かって走る。走る。担任は私を手招きし、向かい合った。「お母さんになんか言われましたか?」私は「う~」と唸ることしかできなかった。そこには「7」の数字ばかり並んだ通知表。通知表の文字と担任の目となだらかな丘陵とをかわりばんこに見続ける。適当に会話を済ませ逃げるように席に着いた。
はあ。水筒の水を一口口に含む。その水は、冷たさをひめて、体内に消え行く。「明日から海なんだよね」クラスメートの声がする。水になったらどうなるか。この暑さの中で蒸発してしまいたい。明日からの休みは楽しみかと尋ねられたら首を縦に振ることしかできない。だけれど、やっぱり自分という存在が薄まっていってしまう気がして、こわい。今日までの自分は、中学校という教育機関に属していた。朝、予鈴が鳴り、担任が来るまでに教室に着かなかったら、私の名前が呼ばれる。本鈴が鳴ってもいなかったら…家に電話でもかけられるだろうか。強制されることが嫌いな私だが、そういった自分の居場所を与えられることはありがたいことである。つくづくと感じた。
ドアがまた閉まった。
はあ。水筒の水を一口口に含む。その水は、冷たさをひめて、体内に消え行く。「明日から海なんだよね」クラスメートの声がする。水になったらどうなるか。この暑さの中で蒸発してしまいたい。明日からの休みは楽しみかと尋ねられたら首を縦に振ることしかできない。だけれど、やっぱり自分という存在が薄まっていってしまう気がして、こわい。今日までの自分は、中学校という教育機関に属していた。朝、予鈴が鳴り、担任が来るまでに教室に着かなかったら、私の名前が呼ばれる。本鈴が鳴ってもいなかったら…家に電話でもかけられるだろうか。強制されることが嫌いな私だが、そういった自分の居場所を与えられることはありがたいことである。つくづくと感じた。
ドアがまた閉まった。
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