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となりのアイツ AN

第32章 夏休み5 かずくん

5-3

およそ半年ぶりに バルコニーを伝ってまーくんの部屋へ。
この前来た時は 引越しの前の晩だった。
あの時のことは 今もはっきりと思い出せる。てか、切羽詰ってたとは言え、よく俺にあんな真似ができたもんだ・・・


カーテンは閉まってるけど 部屋のあかりはついている。
だけどエアコンかけて 鍵まできっちりかかってるから中には入れない
ノックして気づいてもらおうとした時、中からまーくんの声が聞こえてきて・・・

「え?どうしたの、急に?」

俺に向かって言ってる?・・・いや違う。



「はは・・・俺も好きだよ、もこのこと」
「・・・ううん、彼女はいないけど・・・」
「かずくん?え、何・・・そんなはずないじゃん・・・ただの幼馴染だよ」



ガラス越しに聞こえる声に、急に体が冷たくなった。
全身から血の気が引いたみたいに。


帰ろう・・・帰らなくちゃ・・・
後ずさりした俺は エアコンの室外機を蹴飛ばしてしまい、小さいけれどゴン、という鈍い音がする。
バルコニーの手すりを乗り越えながら 振り返った俺の目に映ったのは
耳に携帯を当てたまま カーテンを開き、大きく目を見開いたまーくんの姿。



まーくんが何か叫んでる。



でも俺の耳には何も聞こえない。

まーくんが 焦って窓を開けようとしてる様子が スローモーションのように視界の端に映る。



早く、早く、早く、自分の部屋に戻り、鍵をかけて、カーテンを閉めなくちゃ。
布団に包まって、目を閉じて、眠ってしまわなくちゃ。





神様、今こそ時間を戻して。


3分前に戻してくれたら 俺は何も知らずに まーくんと笑い合えるから。





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