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となりのアイツ AN

第8章 新生活2 かずくん

2-1

嵐のような一日だった。

朝から隣の部屋に荷物を運び込んでくる気配があって、
ああ、隣も引っ越してきたのか、いい奴だといいなぁ、
なんて思っていたら 

インターホンから聞こえてきた「挨拶に来た」というその声は何だか聞き覚えのある声で...



なんで?なんでまーくんが立ってるの?

わざわざこんなとこまでジョーダン言いに来たのかよ?

俺の頭はプチパニック。
口に手を当てたままの姿勢で10秒くらい立ち尽くしてしまった。





あの夜のことは、いま思い出しても恥ずかしい。

少女漫画じゃあるまいし...。

だけどまーくんもガラスの向こうから俺にキスしてくれてるのを見た時は 驚き、混乱して
このまま窓を開けて部屋に入って行きたいという衝動にかられそうになった。

それをしなかったのは まーくんが俺なんかのことを 本気で好きなわけない、という確信めいた想いと、
もし仮に 好きだと想っていても どうせ離れてしまえば続かない 一時の気の迷いだと 自分に言い聞かせたせいだ。


それでよかったんだ。

その証拠にまーくんの方も部屋まで俺を追いかけてくるようなこともなく、その夜、俺は複雑な想いを抱えながらほとんど眠れずに夜が明けるのを待った。






それから1週間、

ようやく新しい生活にも慣れ、ふとした拍子に考えてしまうまーくんのことを 頭から締め出す回数も 少し減ってきたかと思ったところへ...。



俺と同じマンションに来たのはまさか偶然じゃないよな?

俺のこと最初からわかってるふうだった。

それにそうだ、アイツ絶対自分の志望校俺に教えなかったもんな。

きっと母親同士のネットワークでいろんな情報が流れてたに違いない。


...とすると。


まーくんはわざわざ俺と同じ大学を受けて、同じマンションにまで追っかけて来たってことで...


それって...、それって...。

ちょっとは自惚れてもいいのかな...?

まーくんも俺のこと本気だって...

俺達、同じ想いでいるかもって、自惚れてもいいのかな...?

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