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第10章 拉致

リツは何度も華に電話を掛けたが留守番電話になった。
…お願い…出て!なんかおかしいよ。

リツが、華の家にすぐ来てくれるように電話を掛けた。
「お願いです…内線で良いんでスタッフに…聞いて下さい。誰か判る人に…メンバーじゃなくって良いんです。」

リツは泣きながら頼んだ。その様子に他の守衛が集まっていた。

「さっ。君…お家の人にお迎えに来て貰おうか。」

「もうすぐ、親が…友人の親が来るんです。ここで待たせて下さい。」

スタッフによって片づけがどんどん進む会場のライトも今は消えてしまった。

「お願いです!マネージャーでもスタッフでも誰でも良いんで聞いて下さいっ!」

とうとう一人の守衛が折れて、じゃぁ内線だけならと渋々電話を掛けた。呼び出し音が鳴るだけで、誰も出なかった。

「もうみんな帰っちゃったよ。」

「そんな…もう一度!もう一度だけ掛けて下さい!!」

そんな時、奥からガヤガヤと集団が出て来た。

「ユウヤ!」

リツが大声で叫び近づこうとするとふたりの守衛が慌ててリツを止めた。

「リツ…?」

濃い舞台メイクのままのユウヤは、大きな荷物を抱えて出て来た。

「華が…華が…スタッフの打ち上げがあるって連れて行かれたんだけどホント?」

俺の友達ですと守衛に言ってユウヤが近づいてきた。

「無いよ?」

事情を話すと黒メガネのマネージャーがやって来た。

「リツ…さんは、ここで待ってて。おい行くぞ。」

黒田に声を掛けると、真向いのホテルへ飛び出して行った。

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