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楔 ---KUSABI---

第1章 壱・白羽の矢

ヒュッ



無情にも放たれた矢は一直線に私に向かうのは解って、
目を瞑る。

それしか抵抗の手段が残されてはいなかったから。

「うっ・・・」

衝撃。痛み。そして何も抵抗できないことで終わる絶望。

矢を射られた事で、起こしていた上半身は押され、
勢いよくドンっと寝床に頭を打ち付けた。

打ち付けた頭の衝撃で普通なら痛みを覚えるはずだったけど、
痛みを訴えるのは、射られた胸元。心臓の上。

そして、白羽の矢が・・・ガラスのようにバリンッと
砕けて散った。




「・・・はぁっ」

大きく息を吐く。そこで金縛りが解けたと知り、
勢いよく上半身を起こすものの、
そこには何時も通りの闇が広がるばかり。

・・・悪夢か幻か。

でも、じっとりと汗をかき、不快感を覚えた現実だけは、
しっかり感覚として残っていた。

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