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楔 ---KUSABI---

第1章 壱・白羽の矢

まず、異変があったのは体。
射られた場所と思われる心臓の上に、大輪の花が咲いた。
大きな痣。
痣は触っても痛みはなかったが、気味が悪かった。

次に、このことを人に話そうとすると、声が出ない。
他愛もない会話の一つとして、話そうとしたのに、
喉の奥に何かが詰まった感じになって、声が出せなくなる。

ちなみに、普通の会話は出来る。
けれど、あの恐怖を覚えた幻のような夢と、
痣の話は出来なかった。

そして、異常な眠気。
眠くて眠くて、四六時中あくび。
下手すれば、生まれたての赤子の睡眠時間と変わらない位、
眠るようになる。

寝すぎるほど眠るようになると、食欲も落ち、体重も落ちる。
だが、貧相な体にはならなかった。
出るとこは出て、括れるところは括れた。

そして、起きている時でさえ、
どこか遠くに意識を飛ばしているような
危うさを纏うようになり、
その危うさはこの世の者とは思えない何かを感じさせ・・・。

矢を射られてから、半年弱で、ここまでの変化が現れた。
ここまで変化すると、流石に周りも解るようになる。


12年に1度の周期で選ばれる今回の「十八巫女」は、
誰なのか、を。

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