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楔 ---KUSABI---

第1章 壱・白羽の矢

秋祭り当日。
ちなみに白羽の矢を射られてから、ちょうど半年。

何故か今日は、朝から起きていられた。
久しぶり、と思った。
矢を射られる前に戻った感覚。

でも、どこか意識の大部分は遠くに飛んでいて、
感情はフィルターを通した後で、表面化しているように思えた。
フィルターは、マイナス感情を削ぎ落とし、
ただ、楽しいこと、嬉しいことだけを表に表す様な・・・。

今日は、普通に朝飯を食べ、昼飯を食べ、夕飯を食べた。
普通、とはいえ、少しずつ料理は豪華になっていったけれど、
もうあまり量が食べられないから、少しずつ。

生活も普段通りに過ごした。
でも秋祭り当日、十八巫女は出歩いてはいけないので、
家の中で、普通に、だったけど。
でも、こっそり身辺整理は・・・したけれど。

顔を合わせれば、家族との会話も、出来れば普通に。
でも何時もと違うというのは、どこか漂っていたけれど。

夕食後、十八巫女は豪奢な刺繍の着物を着る。
眠り過ぎや、食事量の減少、雰囲気の違いで、
選ばれたのは解るので、親は事前に準備するのだ。
複雑な気持ちは、表に出さぬまま。

祭りは陽が落ち、夜遅くから・・・。

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