
Perfect Romance
第9章 大野智と言う人
「…ここ、かぁ」
聳え立つビルを見上げて、思わず出た独り言
異動を言い渡されて
出世の為には必須だと聞かされて、断るバカはそういないだろう
だけど、幾ら「大人」になったからと言っても
いきなり1人でそこに乗り込むのは勇気が必要なんだ
どんな人がいるんだろう
俺は受け入れて貰えるのかな
期待と不安の入り交じる中、いつまでもそこに突っ立っているわけにも行かなくて
俺は心の中で気合いを入れて、そのビルに足を向けた
入口の受付嬢に社員証と、異動してきた事を伝え
彼女からの「お待ちください」と言われるままにその場で待つ事、数分
先に見えるエレベーターから、1人の男性が笑顔でこっちに向かってくるのが見えた
「お待たせ!」
やけにフランクに手を上げたその人は
受付嬢に「ありがとね」と告げてから、俺に " ついてきて " と促して
「あ、あの…」
「ああ、俺が君のパートナーだから」
ふにゃっと目尻を下げると
" よろしくな!" と右手を差し出した
