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Perfect Romance

第1章 はじまりの唄



その日、俺は朝からツイてなかった

タイマーをかけたはずの携帯のアラームが鳴らなくて
気が付いたら出勤の10分前

いつもの場所にあるはずの腕時計も見当たらない

慌てて起きて、ドアの角に足の小指をぶつけた

「くーーーっ!」
痛みに悶絶して動きたくないけど


俺はまだ入社して4日、…研修中の身

寝坊して遅刻なんて洒落にならない

痛みをこらえて掛けてあるスーツに慌てて袖を通し、寝癖なんて気にする暇もなく、玄関を飛び出した


いつもの電車にさえ乗れれば、遅刻は免れる

駅まで歩いて20分の距離を

脇目も振らずに俺はひたすら走り続けた



俺の住むアパートから駅までは、車もあまり通らない
割と狭い昔ながらの住宅街

普段も、車とすれ違う事なんて殆どない

だから、この日も
焦っていたのと、車なんか来ないだろうと言う思い込みで

小さな交差点を横切ってしまったんだ



凄まじいブレーキ音

スローモーションのように車が近付く

あ…終わったな、俺

反射的に目を閉じた



「…あれ?」

衝撃が来ない
とっくに宙を舞ってると思ったのに

目を開けると、俺からわずか数センチのところで
シルバーの車は止まっていた

多分、この間は数秒
だけど、何だか凄く長く感じた

無事だったのと、まさかの事態に腰が抜けた俺は

…そのままずるずると地面に座り込んでしまった

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