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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


「みんな、ああ言ってるけどさ。世界が変わったことによって、それぞれパートナーの大切さを感じてくれて、結果オーライだったんだよ。相葉くんも遠慮しないでね」


「……遠慮は全くしてないけど」



まるで、自分のしてることは慈善事業だと言わんばかりの金髪野郎に、もはや何も言うことはない。

だいたい、これだけみんな不機嫌なのに、全く気にもとめてないこいつは、どんな神経の持ち主なのだろうか。

すげーな、鉄の心臓だな。



「……じゃあ、そろそろ帰るね。みんな仲良くねー。お邪魔しました」




大仰にポージングして、奴はニッコリ笑った。

その顔は、スチール撮りでみる、俺の顔そっくりだなと思った。


やっぱドッペルゲンガーじゃないの?


……そう思った次の瞬間、彼の姿は煙のように、影も形もなくなっていて。



「え?」



……消えた。



……気持ち悪いくらいに静まりかえる楽屋。


誰も何も言わない。


息をするのもためらうくらいの沈黙に耐えかねて、俺が、なんだったんだろーね、今の!と、喋りだそうとしたら。



コンコン



突如したノックの音に、思わず口をつぐんだ。
ぴくりとにのの肩が、ゆれる。



「……はい」


翔ちゃんが返事をして、扉がそっとあいた。

スタッフの方が、なかなかメイクに来ない俺たちを呼びに来たんだとわかった。


この世界のものではないものが存在していた不思議な空間に、ひゅうっと外からの風がふきこんで。


いつもの景色が動き出す。


みんなどこか安心したように、表情を和らげた。


俺の日常が戻った。

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