キラキラ
第5章 hungry
Sho
チャイムとともに、二時間目が終わり、早いやつは早弁をし始めるこの休み時間。
運動部に在籍し、朝っぱらから朝練をこなしてきたものは、ほぼ100%の確率で、口を動かしてる。
バスケ部で朝から汗を流してきた俺たちも、例にもれず、家から持参してきたドカ弁をかっこんでた。
「……やった。今日は、鮭だ」
口一杯にご飯を頬張る雅紀が、嬉しそうにおかずをつっついた。
今、食べてるこの弁当は、二時間目後用。昼には、ちゃんと別の弁当箱が用意されてあり、さらに、部活が終わったあとのパンまで持参しているのは、毎日のこと。
「翔ちゃんは?」
「ミートボール」
「一個ちょーだい」
「ん」
雅紀の箸が、俺の弁当箱から、一番大きいミートボールをとっていった。
「あっ!てめーっ」
「んふふー」
時間が比較的短いこの休み時間は、早さが勝負だ。
俺も、口のなかにつめこめるだけつめこんで、弁当箱にふたをした。
「ごっそーさん……」
「あーおいしかった。翔ちゃんちのミートボール最高」
雅紀も、手をあわせてから、箸箱と弁当箱をカバンにつっこんだ。そのまま、ごそごそと中をあさり、教科書やら、辞書やらを取り出してる。
「次、なんだった?」
サラサラの茶色い髪をかきあげて、何冊か持ってる教科書をめんどくさそうに眺め、俺に尋ねる雅紀は、小さく、げっ……化学の課題忘れた……って、呟いた。
「松岡だろ」
「……えー……寝れないじゃん」
「……あいつの授業で、寝るやつは今だかつてきいたことないな」
「腹がふくれたら、眠くなるっしょー?」
まあな、と相槌をうち、水筒のお茶をあおった。
「居眠りしてたら、後ろからつっついてね?」
「おお。おもっくそ蹴ってやるよ」
「ばれるじゃん!!」
ははっ、と笑い、大きくのびをした。
ここは、都内にある進学校。
文武両道をモットーとし、高校としてのレベルもそこそこありながら、運動にも力をいれてる学校として有名である。
かくも残念なのは、男子校という部分だが、色恋は、勉強にもスポーツにも、必要ない、という創始者の考え。生徒には昔からのデザインの変わらぬ学ランを着用させ、硬派な学風を貫いている……らしい。
「あ、翔ちゃん知ってる? 三年にさ、すっげー綺麗な人がいるの」
思い出したように、雅紀が振り返った。