
キラキラ
第32章 バースト 8
Jun
詰めの甘い翔は、俺に誕生日を聞いてきたことがない。
女の子からモテてたくせに、肝心なとこぬけてんだよな。
つきあう相手のプロフィールのなかでも、おさえるべきマストな情報だと思うんだけど。
まあ、俺も翔に聞いたことないし、お互い様といえばお互い様。
男同士ってそんなもんなのかもしれない。
夏休みも終盤に入り。
30日という自分の誕生日が近づくなかで、俺は今だに翔に言えてないことがあった。
誕生日当日……翔と過ごしたい…って。
こんな発想が出てくるなんて、自分でもビックリしている。
これが恋してるってことなのだろうか。
なかなかどうして女子みたいで、最初はちょっと抵抗はあったけど、自分の気持ちに嘘はつかないと決めたことを思い出し、納得した。
で、この想いを何度か伝えようとしたけれど。
……なんと、この日は金曜日で、翔が始めた夏期講習の塾の講師のバイトの日と重なるのだ。
バイトを休んでほしいなんていえない。
まして終わって帰ってくるのは夜の11時をまわるから、そこから会ってほしいなんて……いえない。
あきらめなきゃな、と思えば思うほど、もっと早くに自分から言っておけば良かった、と後悔だけが募り、時々すごくブルーな気分になる。
はぁ……とため息をついて、シャーペンの動きをとめたら、
「潤くん。集中してる?」
かずがあきれた声で、俺を咎めた。
俺が、はっと顔をあげると、かずは、頬杖をついて、俺をじっと見つめている。
いつもは可愛らしいくせに、なんだって勉強となるとこんなに怖くなるんだか。
俺は慌てて背筋を伸ばし、シャーペンを握り直した。
「う……ん……」
「心ここにあらずじゃん……そのページ終わったら休憩しよっか。相葉くんは?」
かずが、俺の反対側で数字と格闘してる雅紀に声をかけると、雅紀は疲れた顔で、ドサリと机に突っ伏した。
「もーだめ~。かず……助けてー」
「何いってんの。自分でやらなきゃ意味ないんだよ、宿題ってのは」
かずは、くすと笑って、雅紀のおでこをピンと弾いた。
