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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「カズナリさま」


遠慮がちにかけられた言葉に振り向くと、隣の部屋から姿を現したのは、初日から俺の身の回りの世話をしてくれている男。

大きな目と凛々しい眉毛が印象的。
松の国のジュン王子を思い出すなぁ、と、まず思った。
彼は、ショウリと名乗った。

お世話をする……所謂付き人になったのは、初めてだという。
一生懸命さが好ましいが、この道ベテランの俺には、穴だらけ。


「えっと……コーヒーのおかわりはいかがですか」

「…………」


思わず手元のカップに目をやる。


……まだ、なみなみと入ってるだろ。
見てわかんないのか。
聞くタイミング違うって。


腹のなかでそんなことを考えつつ。
俺はやんわりと断った。



「ありがとう。まだいい」



すると、ショウリは少し顔を曇らせた。



「もしかして……コーヒーお嫌いですか」

「……なぜ?」

「いえ、いつもあまりお飲みになってない気がして……」

「……」



ち、ちがったらすみません!
と、ペコペコ礼をするショウリは、バッタみたいだ。


俺は、ふっと笑って首をふった。


「私がいた国ではなかったものだから……飲みなれてないせいかも。ごめんな」

すると、ショウリは、パッと表情をかえて食いぎみにたずねてきた。


「……ならっ……カズナリさまは、何がお好きですか?僕、準備してきますよ!」


……僕、じゃない。
付きのものならば、一人称は、私と言いなさい。


などと、いちいち突っ込んでしまう自分に嫌けがさす。
そもそも、俺は本当にそういう風に扱ってもらう立場なのか。


俺は、軽く笑って、ありがとう、と言った。


「紅茶の茶葉はある?」

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