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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟

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…………遡ること1ヶ月




幼き頃、母につれられて大の国を訪れて以降、一度も帰ることなかったニノ国。

久しぶりに足を踏み入れたこの国は、大の国とはまた違う温かさにあふれていた。

俺や母さんを覚えていた近所の人たちは、お帰り、という言葉と笑顔で迎えいれてくれた。

だが、大きくなって……、と知らないおばさまに手を握られた時には、どういう顔をしたらよいか正直困ってしまった。
たくさんの人にお世話になってたのかな、と感じた。

おばあさまの具合が悪いことを知らせてくれたのは、隣にすむ靴屋のおばさん。

危篤だ、というのは若干大げさではあったようだが、それでもかなり弱ってしまっていたのは事実で。


俺は、痩せ細ったおばあさまの手を握り、眠っている顔を見つめる。
カズナリ、と優しく俺の頭を撫でてくれていた大きくふくよかだった手のひらは、ゴツゴツ骨張っていて、泣きたくなる。


流行り病に罹患してから、だという。


こじらせた体調はもどることなく、一人暮らしのせいもあってか、周囲の人間が気づいた頃には、ベッドから起き上がることもできなくなっていた。


ごめんね。「大丈夫」って笑っていたから、安心していたんだけど、私たちが仕入れに行って留守にした一週間のあいだに、一気に悪くなってしまったらしくて……


靴屋のおばさんは、涙ぐみながら、説明してくれた。
こんなの誰のせいでもないのに、自分のことのように心を痛めてくれる人がいることが、本当にありがたいことだ。

母さんは一緒になって泣いて、ありがとうありがとう、と何度も頭を下げていた。


医者をよんで、然るべき処置をしてもらったものの、あとは本人の体力次第といわれて、俺たち親子はそのままおばあさまの家にとどまっていた。



「カズナリ。お茶いれたからいらっしゃい」

「はい」



母さんが優しい声をかけてくれて、俺は立ち上がった。

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