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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟



キッチンに入ると、甘いいい匂いに包まれていた。

薄いピンクの華奢なカップから、立ち上るミルクティーのよい香り。

席につき、胸一杯にその香りを吸った。
母さんの紅茶は……いつも優しい。



「冷めないうちにお飲みなさい」

「……ありがとう」



この紅茶の茶葉は、おばあさまに飲んでもらおうと、持参してきたものだ。
元気になったら、是非飲んでもらおう、と思いながら、俺は、いただきます、と呟いて、カップに口をつけた。


大の国のお妃さまはミルクティーがお好きだ。
だから、お妃さまについてる母さんは、普段から
淹れる紅茶はミルクティーが多い。


そして、それらは、とても美味しい。
お妃さまは、母さんのいれる紅茶以外は飲まないとまでおっしゃってるらしいし。


余談だが、サトコさまは、ストレートティーにお砂糖を少し入れて飲むのを好まれる。
サトコさま曰く、この砂糖の塩梅が、俺は上手なんだそうだ。

ながいこと同じ主人につかえていると、好みも体が覚えてくるものなのだろう。


「ヨシノ様は……大丈夫かしらね……」


同じようにカップに口をつけて、ほう……とため息をつきながら、母さんが呟いた。


里帰りすることを、快く承知してくださったヨシノ様……すなわちお妃様は、母さんを全面的に信頼しており、身の回りの大事なことはすべて任せている。
今回、お側をしばらく離れるにあたり、母さんの右腕のようにいつもフォローしてくれる女性、フミノにお妃さまのお世話を託してきたが……。


「代理はフミノにお願いしたのでしょう?あの方なら大丈夫でしょう」


そういうと、母さんは、そうなんだけどねぇ……と、困ったように首をかしげた。


「フミノはね……いい子なんだけど、ちょっとおっちょこちょいなところあるから……ヨシノ様がお怒りにならなきゃいいのだけど」


母さんがクスリと笑った。


心配なんだね。

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