
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
それまで空気を読んで黙っていた俺だが、突然の展開に、思わず息をのんだ。
来てくれって?
それって、まるでプロポーズみたいなもんじゃないか。
こんな言葉、すぐ決断なんかできるはずもないだろう。
俺は、二人の顔をかわるがわる見比べた。
真剣この上ない男性と、呆然としてる母さん。
だけど、涙ながらの母さんをみたら、今にも、「はい」って頷きそうだから、俺は焦った。
大の国の立場や、国同士の背景もある。
「母さん……すみません。こちらは……?」
我慢できなくて口を挟んだ。
すると、母さんは、我に返ったように涙を袖口でぬぐいながら、ふふ、と笑った。
その笑顔が、美しくて驚く。
「そうね……ごめんね。わからないわよね」
分からない……。
でも、この人と母さんの関係は……確かに固いものがあって。
俺が、じっと男性を見つめていると、向こうも真っ直ぐに俺を見かえした。
意思の強そうな凛とした瞳。
人の上に立つことができる強い男の目だ。
その目がふと緩んだ。
「タエ……この子は」
母さんは、嬉しそうに頷いた。
「そうです……あのときの子です」
「そうか……!」
男性は嬉しそうに笑った。
俺は、そのとき全てを悟った。
俺には父さんはいない、と教えられて育ったが。
……この人は……。
「カズナリ。こちらはタクヤさま。……あなたのお父上です」
……父さん。
