キラキラ
第5章 hungry
ところが、一旦意識し出すと、もうダメだった。
大野さんの姿をみかけるだけで、嬉しくて、目が合うとドキドキして、話ができた日には、どうにかなりそうになる。
『櫻井先輩、恋してますか?』
二宮の指摘どおりになっていく自分がとめられなくて、自分でも不思議だった。
男なのにだとか、女じゃないとか、なぜだか問題にならないのも、不思議だった。
「……なあ、松潤」
決して寝心地がいいとはいえない簡易ベッド。
白い、うっすい布団の上で寝転がって天井をみてた俺は、この部屋の主に声をかけた。
「……松本先生、だろうが」
静かな口調で咎めながら、松潤は、机にむかってた体をこちらに向けた。
「そろそろ戻れよ、優等生」
「うん……」
この学校の養護教諭である、松潤……松本潤は、男前なのに、その迫力ある目力と、ぶっきらぼうな態度で、生徒から一目おかれている。
少々な怪我なら、みんな我慢するくらいに。
でも俺は、実は入学したてのころから、秘かな保健室私用常習犯。
勉強がよくできる優等生は、授業中に気分が悪いと訴えたところで、特に疑われることもなく、保健室で休むことができたんだ。
今も、寝不足だったり、怠いとき、ちょくちょく使ってる。
松潤は、そんな俺に、しょうがねえな、と苦笑いして、ベッドをあけてくれてる。
そもそも、全く悪びれずに、頭痛がします、と言い切って、当然のようにベッドに横になり、イビキをかいて爆睡した新入生を、初めて見た、は、後々の松潤の言葉だ。
「特定の人を見て、胸が苦しくなるのは、なんで?」
「……はあ?」
その優等生の口からでた質問に、松潤は、机に肩肘をついたままの姿勢で、目を丸くした。
俺は勢いをつけて起き上がり、体を反転させて、ベッドに腰かけた。
脱いでた学ランを手にとり、腕を通しながら、絶句してる松潤を見据える。
「そりゃ、……そいつに惚れてるんじゃねえの?」
松潤は、んー…と考えながら、最もな意見をいう。
「……だよな」
「お前の話かよ?」
「…………いいや。ダチの話だよ」
「………」
松潤が、何か言いたげな目で俺を見る。
「なんだよ」
「なんでもねえよ。……ほら、五時限目が終わるぞ。帰れ帰れ」
しっしっと、手で追い払われた。