キラキラ
第5章 hungry
体育館について、入り口から中をのぞき、俺たちは目をみはった。
学ランを脱いで、白いカッターシャツの袖をまくった先輩たちは、ボールをまわしながら、楽しそうに走り回ってる。
………驚いたのは、大野さん。
素人の動きじゃない。
昔にかじってました……程度な動きでもない。
井ノ原先輩からボールをうけとり、ゴール下に走り込んで、流れるようなレイアップ。
何よりも、ドリブルの早さ、ハンドリング技術の高さが、すごいのがみてとれる。
「………翔ちゃん。大野さんって経験者?」
雅紀がぽつりと、呟いた。
「………知らねえ」
俺は、フルフルと首をふる。
「あれ、絶対ヤバイですよ。マジもんですよ」
二宮が、眉をひそめて、断言した。
ひそひそと、入り口で顔をつきあわせてしゃべる俺らは………あやしい三人組だ。
「お。来たな」
岡田先輩が、肩口で汗をふきながら、こっちを見て笑った。
井ノ原先輩と、大野さんも足を止める。
「さ。やろーぜ」
井ノ原先輩がニヤリとした。
「負けた方が、ジュースおごりな」
「手加減しないよ?」
大野さんが、髪をかきあげて、いたずらっぽく笑った。
大野さんのその仕草は、やっぱりすごく綺麗だった。
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「どーする?まだやるか?」
「いえ………参りました」
40分後、俺たちは汗だくで体育館の床に転がってた。
まだまだ余裕綽々な井ノ原先輩は、相変わらずタフだ。
ダンダンと、両手で交互にボールをつきながら、
まだ、やりたりないというように、ニヤニヤしてる。
岡田先輩は、座り込んで、「あーっ、いい汗かいた」って、笑ってる。
大野さんは、にっこりして、転がってた俺に近づいてきた。
「疲れた?」
「………はい」
はははっと笑って、答えるしかない。
思ってもいなかった展開だった。
大野さんのプレーは、予想を超えるレベルの高さだった。
雅紀レベルで、なんとかくらいついていけるくらいだ。
俺と二宮は、完全に遊ばれてた。
つけくわえて、井ノ原先輩と岡田先輩だろ。
太刀打ちできるわけないんだ
でも、スゴく楽しかった。
俺は、笑いがとまらなかった。久しぶりに、全力でやってコテンパンにされた。