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キラキラ

第5章 hungry


体育館について、入り口から中をのぞき、俺たちは目をみはった。

学ランを脱いで、白いカッターシャツの袖をまくった先輩たちは、ボールをまわしながら、楽しそうに走り回ってる。

………驚いたのは、大野さん。

素人の動きじゃない。
昔にかじってました……程度な動きでもない。

井ノ原先輩からボールをうけとり、ゴール下に走り込んで、流れるようなレイアップ。
何よりも、ドリブルの早さ、ハンドリング技術の高さが、すごいのがみてとれる。

「………翔ちゃん。大野さんって経験者?」

雅紀がぽつりと、呟いた。

「………知らねえ」

俺は、フルフルと首をふる。

「あれ、絶対ヤバイですよ。マジもんですよ」

二宮が、眉をひそめて、断言した。

ひそひそと、入り口で顔をつきあわせてしゃべる俺らは………あやしい三人組だ。

「お。来たな」

岡田先輩が、肩口で汗をふきながら、こっちを見て笑った。
井ノ原先輩と、大野さんも足を止める。

「さ。やろーぜ」 

井ノ原先輩がニヤリとした。

「負けた方が、ジュースおごりな」 

「手加減しないよ?」

大野さんが、髪をかきあげて、いたずらっぽく笑った。

大野さんのその仕草は、やっぱりすごく綺麗だった。

***** ***** ******


「どーする?まだやるか?」

「いえ………参りました」

40分後、俺たちは汗だくで体育館の床に転がってた。

まだまだ余裕綽々な井ノ原先輩は、相変わらずタフだ。
ダンダンと、両手で交互にボールをつきながら、
まだ、やりたりないというように、ニヤニヤしてる。
岡田先輩は、座り込んで、「あーっ、いい汗かいた」って、笑ってる。
大野さんは、にっこりして、転がってた俺に近づいてきた。

「疲れた?」

「………はい」

はははっと笑って、答えるしかない。
思ってもいなかった展開だった。

大野さんのプレーは、予想を超えるレベルの高さだった。

雅紀レベルで、なんとかくらいついていけるくらいだ。

俺と二宮は、完全に遊ばれてた。

つけくわえて、井ノ原先輩と岡田先輩だろ。
太刀打ちできるわけないんだ

でも、スゴく楽しかった。

俺は、笑いがとまらなかった。久しぶりに、全力でやってコテンパンにされた。

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