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キラキラ

第34章 バースト9


まったく……と、呟いて、ガリガリ頭をかいてるかずに、俺は戸惑う。


え……俺、変なこと言った?
ずっとモヤモヤしてることを口走ってしまっただけなんだけど。


黙った俺に、かずはしょうがないなぁというように笑って、カタリと、赤ペンを机に置いた。


「やきもちやきの旦那と、ド天然な奥さんかー……こりゃ大変だなぁ」

「……っ……天然って……」


俺が心外だ、というように顔をしかめたら、かずは、頬杖をついて、その綺麗な茶色の瞳でじっと俺を見つめた。
俺が、ドギマギしてると、かずは、にっこりして言う。


「あのね? 翔さんは、潤くんが誰かになびくかもなんて、一ミリたりとも思ってないよ?」

「……でも」

「潤くんが魅力的だからこそ、自分の他に潤くんを好きな人が現れやしないか、心配なだけ」

「…………」

「そこらへん分かってあげないと」

「…………」

「ね?」

「……うん」


俺がうつむくと、かずの丸い手が、俺の手にそっと重なった。
触れたところからじんわりと温かくなり、心がふわりと軽くなる。

かずは不思議な男で、テレパスの能力を使用せずとも、そのとき一番欲しい言葉をくれる。


「……まじない師みたいだな」

「?なにが?」

「なんでもない」


くすりと笑い首を振ったタイミングで、ただいまー、と玄関から翔の声がした。


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