キラキラ
第6章 いっぱい ~hungry ~
N
そいつは、中学時代から、目立っていた。
やたら、うちの女子バスケの連中が、連呼する名前は決まって他校のそいつの名前。
隠し撮りしたらしき写真を囲んでは、キャアキャアいってるのを、俺ら男子バスケ部員は、冷めた目でみてたものだ。
アイドル扱いされて、いい気になってるチャラチャラした男だろう?
バスケの腕は、どうせたいしたことないんじゃね?
全員そう思ってた。
俺も、例にもれず、そう思ってた。
その考えが大きく変わったのは、中学二年の夏の大会。
ひときわ黄色い歓声を浴びているコートがあることに気がつく。
「なに?」
「どこのガッコだよ?」
同級生らと顔を見合わせ、ちかづいていく。
異常に盛り上がってる。
ユニホームの柄がみえてピントきたらしき奴が、ああ…と、いうように、眉をひそめた。
「ほら、あいつじゃん。女子が騒いでた………なんつったっけ」
「………マサキクン?」
俺が記憶の端にあった名前を告げると、そうそうと、頷く。
「あいつのガッコだよ」
「へえ………」
スコアボードに目を走らせた。
完璧なワンサイドなゲームだ。
コートに目をむける。
ドリブルでディフェンスをかわしながら、飛び込んでいく奴が目に入った。
そいつはすさまじいスピードでゴール下に潜り込み、軽々とシュートを決めてみせた。
そこで、試合終了。
ワッと勝ったチームがハイタッチをして喜びあってる。
さっき、鋭い顔でシュートを決めてみせたやつも、いっきに破顔して、チームメートと喜びあってた。
その表情のギャップにドキリとした。
険しかった目が、今は優しく細められ、顔いっぱい体いっぱいで、嬉しさを現してる。
顔は、モデル並みに小さくて、背はスラリと高く、足が異常に長い。
おんなじ、人間?と思うほど、ルックスのいいやつだった。
「あ、ほらほらあいつだよ。マサキってやつ」
同級生が指をさしたのは、まさしくそいつ。
「二年?」
「三年ってきいたぜ。これであいつら引退だろ」
「ふうん………」
俺は、心底残念だと思った。
試合を、あいつとしてみたいと思った。