キラキラ
第6章 いっぱい ~hungry ~
二回目に、そいつと出会ったのは、まさしく一年後の同じ大会だった。
俺ら三年にとっては、最後の大会。
いつになく、試合前のピリピリした緊張感と、会場内の異様な熱気に耐えきれなくなり、アップしてくると言いおいて、試合会場の外に出た。
ジリジリと焼けるような日差しの中、少しの木陰を求めて移動し、ストレッチしながら体を動かす。
ふと前方に目をやると、二人の学生が、こちらに向かって歩いてきた。
(あ………)
すぐに分かった。
(マサキ、だ)
マサキは、若干髪の色を明るくしていたものの、笑顔はあの日とかわってない。
連れの学生も、美形だった。目がくりっと大きくて、正統派なイケメン。
二人は、白いカッターに、黒の学生ズボンという出で立ちだった。部活帰りなのか、大きなバッグを肩からさげてる。
このあたりの高校で、このテの制服っていうと………。
考えてるうちにも、二人は、俺がいる入り口に向かって近づいてくる。同時に話し声も、聞こえてきた。
「………今年はさ、準決であたる学校が、強いらしくてヤバイかもって言っててさ」
「去年、何位だったとこ?」
「ベスト4………あっ!翔ちゃん、ヤバイ始まってる!」
中を覗きこんだ二人は、靴を脱いで、会場内に消えた。
初めて聞いたマサキの声。
男にしたら、柔らかい甘めなトーンだった。
高すぎず、低すぎず、心地いい響きだった。
俺の前を通りすぎる時に、二人が着ていたカッターシャツのそでについた刺繍に気がついた。
(男子校じゃねぇか)
都内にある私立の進学校の校章だ。
自分の受験校を決めるため、バスケの強い学校をピックアップしてるときに、見たのを覚えてる。
(マサキ、勉強もできんだな………)
自分の偏差値じゃ、ぎりぎりの学校だ。
(………)
決めた。
マサキと同じ高校に行きたい。
そして、あいつとおなじコートに立ちたい。
俺の目標が決まった。