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キラキラ

第6章 いっぱい  ~hungry ~

「早くって」

相葉先輩に、再度促されて、腹をくくった。

「じゃあ………失礼します」

おずおずと、広い背中に近づいて、相葉先輩の肩に手をかけて、そっとくっつくと、たくましい腕が俺の膝裏に回って、ひょいと持ち上げられた。

とたんに、目線があがる。

今、見上げてた櫻井先輩と、同じ位置で目が合うのが、不思議で、思わずうつむいた。

「うっわ、軽っ」

相葉先輩のすっとんきょうな声が至近距離でする。

「これはダメだよ。二宮。もっと食わねえと」

びっくりしてる相葉先輩と、クスリと笑う櫻井先輩。

「………食べてますよ」

小さく反撃してみたものの、あまり効果はなかった。

「じゃ、行ってくる」

「おう。気をつけて」


櫻井先輩に送り出され、相葉先輩は、俺をおぶったまま、スタスタ歩き始めた。
何事もなく、いたって普通の速度で歩いて行く。

そんな軽いかな?俺。

俺は、相葉先輩の肩に手をおいたまま、背中にくっつきすぎないように、頑張って自分の体をおこしてた。

だって、あんまりぺったりしすぎて気持ち悪がられてもなあ。

そんなことを思ってたら、相葉先輩が言う。

「あのさ。嫌かもしんないけど、もっと力抜いてくっついてくんない?歩きづらいから」

………………

「………はい」

俺はもうやけくそで、相葉先輩の肩においていた手をスライドさせて、首にまきつけた。
どうじに自分の胸を、相葉先輩にぴったりくっつけた。

「そうそう」

相葉先輩は、嬉しそうに言って、俺をよいしょ、とおぶい直した。

相葉先輩の頭が目の前にある。ドキドキしながら、普通の顔を装うのって、結構大変だな。

髪から、汗とシャンプーのまじった香りがする。
相葉先輩の匂い。

俺………汗臭くないかな。

急に気になってきた。

ふいに相葉先輩が口をひらく。

「二宮ってさー、なんでこの学校受けたの?」

「え……」

相葉先輩が、いたから。

………なんていえるはずもない。



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