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キラキラ

第6章 いっぱい  ~hungry ~

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相葉先輩にバッシュを脱がされ、足首がさらされると、急激に痛みが襲った。

「あー………ちょっと腫れてんじゃん」と、櫻井先輩に言われ、あ………本当だ、と、初めて気がつく。

接触して吹っ飛ばされたときに、ひねったみたいだ。
プレー中ちょっと違和感があったけど、集中してたからか、その程度でそれ以上は何も感じなかったのに。


「おまえさ、保健室行って、松潤………松本先生に見てもらってこい」

櫻井先輩が時計を見上げる。

「多分まだいるはずだから」

「………はい」

別に、いいのにな、と思ってたら、相葉先輩が、俺の下げてる靴下を元通りにして、腫れてるとこを心配そうにさすってくれた。

「歩けるか?」

優しく問われ、なんだかくすぐったく感じた。
優しい先輩たちだ。

「大丈夫です」

笑って、立ち上がろうとしたら、相葉先輩が手を差し出してくれた。

一瞬ためらったけど、その手を握った。

大きくて温かい手。

ずっと握ってたい衝動にかられ、立ち上がって、すぐに離した。

「キャプテンに、一言、言ってからいけよ?」

櫻井先輩に言われて、はい、と返事をし、歩きかけて……立ち止まる。

「………保健室。南校舎でしたよね?」

振り返って尋ねると、二人の先輩は、思いっきり変な顔をした。

櫻井先輩が髪をかきあげて、はあ、とため息をついた。

なに………なんか、俺、変なこと言った?

「だよな。保健室使わねえやつは、場所なんか覚えてねえよな」

櫻井先輩が苦笑う。

相葉先輩も、くすくす笑って、時計を見上げた。

「翔ちゃん、俺連れて行ってくるわ。松潤帰っちゃうかも」

「いや、別に大丈夫………」

言いかけたけど、相葉先輩はさっさとキャプテンに報告しにいってしまった。

ぼんやり突っ立ってると、小走りで帰ってきた相葉先輩が、俺の前でしゃがんで、はい、と背中を向けた。

「………は?」

なに?

「早く」

いや、待て。

「や………でも………」

「照れてる場合かよ。別に誰もなんも思わねえよ」

相葉先輩が、笑って、ほら、と促してくる。

………俺が思うってば!

固まった俺に、櫻井先輩が追い討ちをかけた。

「松潤帰るの早いぜ?」

………マジかよ…

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