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キラキラ

第35章 屋烏之愛


俺の表情の変化に気づいたらしき松本は、怪訝な顔になった。


「……どうした?」


俺は、黙った。


……言えない。


だって、もしも、松本にそこまでする気が、そもそもなかったとしたら、恥ずかしすぎる。

……なに、先の先まで心配しちゃってんだって話だろ。


ぐるぐると言いたいことを押し込めて黙ってると、松本は、表情をやわらげた。


「……俺が怖い?」

「…………」


……そうじゃないよ。

俺は首を振る。


「じゃあ……この先が怖い?」

「…………」


俺は、図星だと丸バレの顔で、唇をかんだ。

松本は、分かったよ、というように頷いて、俺の髪の毛をそっと撫でた。


「大丈夫。いきなり最後までなんてしねぇよ。ただ……」

「……」

「少しだけ……お前に触れてお前を感じたかった」


そうか……最後まではしないのか。


どこか、ホッとした思いになったのが、顔に出たのだろう。
松本は、クスクス笑って俺に、触れるだけのキスをした。


そして、すごく近い位置で低く囁いた。


「カズが痛いことは絶対しないから。続きをしてもいいか?」


続き……最後までしないってことだよね?


松本のしたいことは、多分、俺にとってはものすごく恥ずかしい。

でも、こうして俺にお伺いをたててる彼は、すごく健気にみえてくる。

俺は、迷って……迷って。

……こくり、と頷いた。

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