
キラキラ
第35章 屋烏之愛
「胸焼けしそうだよ」
向こうのベンチで、上田らと喋ってる松本に聞こえたら怒られるからか、相葉は、俺だけに聞こえるようにからかう。
「……なんか最近二人雰囲気ちがうんだよなぁ……なにしたの?」
「……なにもしてません」
「チュウ……くらいはもうしてるか。あ!まさかついに一線越えちゃった?」
「……っ……相葉先輩!」
なんてこというんだ!
俺が真っ赤になって抗議しようとしたら、松本がつかつかと近づいてきたかと思うと、空っぽのペットボトルで、すぱーんと相葉の頭を殴った。
「ってー!」
「カズをからかうんじゃねぇ」
「……いやーだってさー」
「言い訳はいらん……おい、カズ。来い」
俺が苦笑いしながら、とことこと松本のそばに寄ると、がしっと肩を抱かれた。
「いいか?相葉と二人になるな」
「……俺のせいですか?」
「せいじゃねぇけど。念のためだ」
「ふふふ……」
ヤキモチ焼きな恋人。
窮屈なほどの束縛も、なんだか心地いいし幸せだと思えるのは、俺も相当キてるのかも。
ふいに、ちゅっと柔らかいものが頬に触れた。
俺が頬をおさえて、バッと松本をふりあおぐと、
「可愛いな。カズは」
松本が、世界一の笑顔で俺をみつめてる。
いや……だから……
ただひとつ困るのは、体育大会以来、イチャイチャする場所を選ばなくなったこと。
曰く、恋人だって全校生徒に知られてるんだからいいじゃん、というのが松本の言い分。
でも、これに関しては俺はまったく慣れなくて。
真っ赤になってうつむくと、松本が俺の頭を優しく撫でた。
相葉が、ヒューって騒いでる。
うるせえぞ!って松本がでれでれの顔で(多分)、突っ込んだ。
もう……
俺は、笑うしかなくて。
二人きりの時に、潤!って怒ってみようかな……。
グループのリーダーであり、恋人でもある松本に、そっと寄りかかった。
fin.
