
キラキラ
第36章 バースト10
Sho
年末の気忙しいある日の夕食時のこと。
「旅行にいこうか」
好物のシチューをうまそうに食べていた智兄が、ふと思いついたように口を開いた。
一瞬、聞き逃しかけて、ん?と思い顔をあげると、かずと目が合う。
かずもきょとんとしてる。
聞き間違いか……?
「……旅行に行ってくる、ではなく?」
まさかな、と思ってサラダを口に運びながら、俺は確認する。
松岡さんとお泊まりデートでもしてくるつもりなんだろうか。
茶化すつもりで聞いてみたら、智兄はフニャッと笑って首を振った。
「違うよ。みんなでいこう」
「……三人でってこと?」
智兄とかずと俺で、ってことだろうか。
すると、智兄は、ふーふーとシチューに息をふきかけてから、ううん、と言った。
「潤と相葉くんも誘いなよ。都合つくならその二人も連れてってあげる」
「……どうしたの、急に」
突然の提案に俺は、ぽかんとしてしまう。
かずもスプーンを握りしめたまま固まってる。
智兄は、つやつや光る人参をパクリと食べて、得意そうに鼻をふくらませた。
「ボーナスがでた」
「……よかったね」
「それが、成績優秀だからご褒美だっつって上乗せされてさ。思ったよりたくさんでた」
「へぇ……」
「で、思ったんだ。旅行なんてガキの頃以来してないし……どうせなら、みんなで行きたくなったんだ」
俺が出すよ、と智兄は、胸を張る。
