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キラキラ

第37章 寵愛一身



俺は、単行本をぎゅっと抱えたまま、その場に立ちすくむ。


……どうしよう


俺が、松本に近寄れば、女子高生たちはどうするだろう。
話しかけるのをやめるだろうか。
それとも俺のことなんかアウトオブ眼中で、そのまま松本にアタックするんだろうか。


そして、そのとき松本は……なんて答えるんだろう。


そうこうしてる間にも、その子は、今にも松本の肩に手をやりそうな位置まで寄ってきていた。

動くタイミングなら、今だ、と思う。

しかし、俺は、すっかり目の前のキラキラした女の子たちのオーラに、圧倒されてしまっていた。

恋をしています。あなたが好きです、と、こんなに分かりやすく可愛らしくストレートに表現してるのを、うらやましく思った。

さっき、切ない上田の瞳をみてしまったからだろう。

わかっていたはずなのに、性別の違いをこうも見せつけられると……苦しい。

表だって、アピールできるかどうかなんて、どうでもいいと思っていたけど。

いくら寛容な世の中になってきてるとはいえ、男同士の関係を自ら暴露してゆく気にはなれない。

なによりも、松本の負担にはなりたくないと思ってしまう。

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