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キラキラ

第38章 バースト11


確か、かずに出会った頃、心を読んでしまうことに悩んでいたあいつに、能力者だから生きにくいと思ってほしくない、と智兄は言ってた。

そうやって、いつもいつも周りを気遣ってくれる智兄自身は……どうだったのかな、とふと思う。

……千里眼の能力を疎ましいと思ったことって、あるのかな、と。

コントロールに苦しんだ話はあまり聞いたことはない。
俺に弱味をみせることは……ない。


「智兄」

「……うん?」


もぐもぐとロールパンを咀嚼しながら俺をみる智兄は、とても子供っぽいんだけど。


「……バターついてる」

「う?」


舌でペロリと口のまわりを舐めて、


「……ほんとだ」


ほにゃ、と笑うこの兄を…今度は俺が守りたいと思う。
智兄のパートナーである松岡さんとは、また違う立ち位置で、弟として、この先もずっと。


「智兄」

「……ん?」

「……もう……いなくならないでね」


智兄は、目を丸くしたあと……ふっと笑んだ。


「………なんねぇよ」

「…………うん」


小さく呟かれた言葉を信じる。



テレビから、今日はよい天気になるでしょうとお天気お姉さんの声がする。
窓の外は、ここ最近の曇天が嘘のような青空だ。


「……今夜は、すき焼きにしようかな」

「お疲れ様会か?」

「うん」

「相葉くんも呼んでやれ」

「うん」

「潤にも声かけていいぞ」

「……ありがと」

「賑やかな方が楽しいしな」

「智兄も、松岡さん声かけなよ」

「……うん。まぁ……うん」


自分のことになると、少し照れる智兄にクスリと笑い、俺はコーヒーのおかわりをいれるために、マグカップを手にした。




fin.





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