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キラキラ

第39章 バースト12



断りたいのが本音だ。

だが、1度了承したことを覆すことは……俺にはできない。


…………くそっ



送るだけだ。
帰り道に寄るだけだ。
それだけだ。

俺は念仏のように唱えながら、


「もう帰るだけですから。かまいませんよ」


めんどうな顔にならないよう気をつけながらそう答えると、カホは嬉しそうに目を輝かせて、微笑んだ。


「ありがとうございます。翔くんとドライブみたいで嬉しいです」

「…………」



ドライブ。

いやいやいや……違ぇーだろ。

これ、否定するのは心狭すぎか?
考えすぎか?

顔がひきつるのがわかった。




憂鬱な気分で駐車場にむかう。

智兄のコンパクトカーを目にしながら、まさか、潤以外のやつを隣に乗せて走るはめになるなんて……、と、気分は下り気味だ。

そんな俺に気づきもせず、


「失礼しまーす」


可愛らしい声で、カホが助手席に乗ってくる。


俺は、カホの家の住所をナビゲーションにセットしながら一応儀礼的に謝った。


「すみません。暑いでしょう。エアコンきくまで少し時間がかかりますが」

「いいえ。大丈夫です。自然の風の方が私は好きです」


にっこり笑ってシートベルトを装着する姿は無邪気だ。


…………


悪気はないんだよな、この人も。


俺は、落ち着こうと、小さく深呼吸した。

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