
キラキラ
第8章 バースト
「…………大野さんは、なんか作るくらいなら食べなくていいって人なんですか?」
雅紀が不思議そうに言うと、大野さんは、まあ、そうともいうかな、と、言葉を濁した。
「俺一人ならそれでもいいけど、かずは、そういうわけにいかないし…………でも、俺もかずも、料理はからきしだから、どうしても翔に頼っちゃうんだよなあ」
へへへ…………と笑う大野さん。
「ダメなんだよ。この二人。食に執着なさすぎて、ほっといたら、なんも食わねぇの」
翔があきれたように眉をさげた。
なるほど。
大野さんもたいがい細身だけど、かずの儚いほどの華奢な体つきにも納得がいく。
色も白いし、太陽にあたったら、パタリと倒れそう…………。
「…………別に、少々食べなくたって死にゃしないよ」
ぼそりとかずが言う。
「いいや。おまえ一番ダメだろ。すぐ体調崩して寝込むだろーが」
翔が被せぎみに反論した。
かずは、ぶうっとふくれて、足を抱えてソファーに座り直した。
のんきな兄貴と、世話焼きな兄貴と、居候な末っ子。
楽しそうだけど…………
「大野さんたちのご家族は…………?」
雅紀が、聞いていいかな、というように疑問を口にした。
実は、俺も気になってた。
話を聞いてると、どうやら三人で暮らしているようだけど。
大野さんが社会人とはいえ、翔はまだ高校生。
家事があまり得意じゃなさそうな、兄貴と居候と暮らすのは、翔はいろんな意味で大変なんじゃないかなあって。
「健在だよ。仕事の関係で三年前から外国に住んでる。俺と翔は日本がいいからここに残ったんだ」
そういうことか。
え、じゃあ…………
「かずは?」
何気なくでた言葉。
大野さんがちょっと口をつぐんだ。
翔の瞳が、少しだけ揺れた。
かずが、一瞬だけ、寂しそうな顔をした。
なんとなく変わった空気に、聞いちゃいけないことを聞いてしまったと感じ、瞬時に後悔する。
「ま、おれらと似たような理由かな。遠い親戚みたいなもんだ」
大野さんが、ゆるくまとめた。
「ふうん…………」
それ以上掘り下げるのは、ためらわれて、雅紀と二人で頷くことしかできなかった。
