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キラキラ

第8章 バースト



「…………読めるけど。見境なく読まないよ」

ぶすっとしたかずの声に、大野さんは、優しく「分かってるよ」と、頷いた。

「………違うよ、かず。そういう能力だって言いたかっただけだよ?」

「うん……ごめん。分かってる」

かずは、こっくり頷いて、足下に目をやった。

心が読める、能力。
それは、周りにいるものにとっては脅威だろう。
心を丸裸にされるのは、体を開かせるのと同じくらい…………いや、もしかしたらそれ以上に乱暴なことかもしれない。

でも、きっと、かずはそれをすごく理解していて、人の本心を読んでしまえることに対する罪悪感が、あるのだろう。

唇をきゅっと引き結んで、軽くうつむいた横顔に、そんなかずの思いがすけてみえる。

すごいな、とただ呑気に感心するだけの能力なんて、多分ないんだろうな。

俺は、思う。

人に知られたくない爆弾なんて、誰も好きで持ちたくなんかないよ。
でも、そんな事情を抱えて生きていかないといけないとしたら。

多かれ少なかれ、きっと、ここにいるみんなそれぞれにやりづらい現実を抱えてるはずだ。

それに、うまく折り合いをつけて生活することは、大変なんだと思う。

こんなチカラが不安定な俺ですら…………偏屈な仮面をかぶり続けてるのが、時々辛くなるから。
心から笑って、何も気にしないで怒って、泣きたい、と思ってしまう時が、たまに、あるから。


かずを見つめて、ぼんやりそんなことを思っていると、大野さんは、「で、俺はね」と、ふふっと
自分を親指で指した。

「千里眼の能力があるんだ」

「せんりがん?」

「うん。まあ、透視っていったら分かりやすいかな?」

この場にないもの、いない人を視ることができる、と大野さんは、言う。

「行方不明者を探してって言われたら、多分できるだろうけど、そんなことまでしたことない。せいぜい、なかなか帰ってこない翔が、今どの辺にいるか、探るくらいだな」

「ひどいんだよ。二人がかりで、遊びに行ってる俺を呼び戻したりするんだぜ?」

翔が口をとがらせて、思い出したかのように口をはさんだ。

「だって、俺とかずじゃ、なんも作れないって言ったじゃん」

「ラーメンくらいできるだろーが」

「………難しいな」

「作る気ねーんだろ?」

ばれたか……と大野さんが笑った。





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