テキストサイズ

キラキラ

第40章 星空に届け

Satoshi





………例えば、それが夜のコンビニ前だとか、ザワザワした公園だとか。
場所が場所なら俺だって気にもとめずに通り過ぎていたにちがいない。











「………さむ」


突如吹いた風に肩をすくめる。

昼間は季節外れの暖かさなのに、夜は真冬同然の冷え込みだ。
朝に油断して薄着ででかけると、夜、後悔する。

朝の天気予報のニュースを信じ、念の為、ダウンを着てでて正解だった。

冷たくかじかんだ手をぎゅっと握りしめながら、ふと、夜空を見上げると、月がぼんやりと薄い雲をかぶってる。


……最悪


雨かもしれない明日の通勤のことを考えると、憂鬱になる。

ため息をついてネギの飛び出たビニール袋をガサリと持ち直す 。
そうして、背を丸め再び歩き出した。


駅から自宅アパートまでは、のんびり歩いて約10分。
利便性のみで選んだその場所は、少々古いが、男の一人暮らしには何ら問題は無い建物だ。
風呂もトイレもちゃんとついてて、小さいながらキッチンもある。

隣の部屋から時々聞こえてくる、なんだかわけ分からない音楽の音漏れさえ我慢すれば、満点だ。

自分だけの空間で、のんびり過ごすことを至上の喜びとしてる俺は、会社が終わればほぼ直帰。
釣り道具をさわったり、スケッチブックを開いたり。
適当なツマミをつくって映画を観たり。
自分のために使う時間が何より大事だ。


なので、結婚は俺には向いてないと思う。
なんなら恋人もいらない。
束縛なんて真っ平御免だから。

つまり、目下、充実したおひとり様を送ってるというわけである。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ