キラキラ
第9章 どきどき
パラパラっと俺の課題をめくり、ふーん、と考えてる相葉先輩は、俺がそんなことを考えてるなんて、思いもしないだろう。
俺は、じーっと相葉先輩の指を見てた。
長い指。
男っぽくて大きい手をしてるけど、指は意外に細くて長い。
バスケットボールを掴むのには、好都合なんだろうな。
触れたいな…………
突如思ってしまった発想に、自分で慌てた。
いやいやいや。
オンナみてえじゃん。
しっかりしろ、俺。
一人突っ込みをしながら、ひそかに焦ってると、
「…………なあ。いい天気だし、中庭いかねえ?そこで、教えてやるよ」
相葉先輩は、パタリと教科書をとじ、俺の髪をくしゃっとかきまぜた。
「…………いいんですか?」
「ここで教えても、いいけど。普通に喋りたくない?」
みんな、勉強してっから、しゃべりづらいしな、と相葉先輩があたりを見回した。
この学校の中庭は、ちょっとした公園のように木々が生い茂り、草花が美しい。
そんななかに、机とベンチが、ところどころに設置されている。
俺たちと同じように勉強してるやつもいれば、弁当をひろげ、談笑してるグループもある。
ちょっと待っててな、といいおいて、どこかに行ってしまった相葉先輩を待ちながら、俺は、ノートを広げて、にやける顔をおさえられずにいた。
相葉先輩の解説は、本当に分かりやすい。
英語が得意科目だけあって、発音もかっこいいんだ。
ふふ…………なんか、家庭教師みたいだな。
シャーペンをくるくる指の上でまわしながら、空を見上げた。
雲ひとつないぬけるような青空。
ふわりと頬をなでていく風も心地よくて。
気持ちいいな…………。
ぼうっと、青色を見つめてると、
「おまたせ」
…………の視界に、ドアップで相葉先輩が入ってきた。
そのまま後ろに倒れそうになり、なにしてんだ、と笑いながら相葉先輩に支えられた。
…………恥ずかしい。
「いちごと柚子、どっちがいい?」
一緒に飲もうと思って、と、相葉先輩は紙パックのジュースを差し出した。
「あ…………じゃあ、いちごで」
「ん」
「ありがとうございます」
差し出されたジュースは、冷たくて、すごく甘かった。