テキストサイズ

キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~


Satoshi



静寂の中、昼休みを告げる12時の鐘が鳴った。


待ってました、とばかりに、空気がざわめき動き出した。

「…………あー腹へった」

「なに食う?今日」

あちらこちらで交わされる会話。

女子社員は、流行りのお目当ての店に行くべく、カーディガンをはおり、グループで、さっさと早足で出ていく。

キリのいいところまで、入力したかった俺は、パソコンをにらみつけたまま、未だ忙しく指を動かし続けていた。

連れだって社員食堂に向かう同僚らが、デスクから動かない俺に気づいて声をかけてきた。

「大野、終われる?食堂行くぞ?」

「ああ…………俺は今日は、持ってきてっからいいや」

右手で、ごめん、という仕草をすると、分かった、と言いながら、がやがやと歩いていく。

しんとなったフロア。

「……………よしっ…………と」

パチンと、enterキーを押して、ため息とともに椅子の背もたれに寄りかかった。
首をならしながら、ぐるりと見渡せば、ぽつりぽつりと何人か残ってはいるが、ほぼみんな休憩に出払った感じだ。

俺は、パソコンを閉じて大きくのびをした。

ずっと画面を見続けてるから目が乾いてチカチカする。
デスクの上に転がってる目薬を手にとり両目にさしてしばらく、目を閉じた。

鞄には、朝、弟の翔が握ってくれた大きなオニギリが3つ入ってる。
そのオニギリをもって、会社の近くの公園で森林浴をしながら食べるのだ。そして、少しだけ昼寝。

これが最高。

がやがやした社食で、にぎやかに昼飯を食べるのも、大事なつきあいだけど、もともと一人が好きな俺は、そうやって、自分をリセットする時間も大事だと思ってる。

まあ、現役高校生である翔も、登校しないといけないわけだから、余裕のあるときしか作ってくれないけど。

ふう、とため息をついて、立ち上がって腕時計に目を走らせた。
休憩時間終了まで、ジャスト50分。

「外は、寒いかな…………」

眩しい窓の外を見つめながら、腕まくりしていたシャツの袖をくるくるもとにもどした。

日差しがあるとはいえ、春先の今は風が吹いたら、肌寒いかもしれない。

俺は、脱いでたスーツの上着を来て、小さな鞄を手にした。

腹の虫が、クウクウなりだした。

オニギリの中身はなんだろう、とのんきなことを思いながら、フロアをでた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ