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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

カチャリという、静かな音とともに、さっきの人と、もう一人スーツを着た大人の男の人が、入ってきた。

俺は、横になったまま、近づいてくるその二人をぼんやりと見つめた。

スーツの男に見覚えがあった。

ふわふわした髪のそいつは、そっとべッドサイドにしゃがんだ。
そうして、俺と視線の高さをあわせてニコリとした。

「…………元気になるまで、ここにいていいからな」

公園で、「自分、大丈夫か」と、かけてくれた声と同じ声が、優しい口調で、再び語りかけてくれる。


…………なんつった?今。

ぼうっとした頭で、その言葉を反芻した。

いてもいい?
…………何で?
初対面だよね?


「汗…………すごいな」


気持ち悪かったし、苦しいし、暑いし。
額に汗がういてるのは、自覚してる。

さっきのやつが、持ってきたタオルを、そっと俺の額にあててくれた。

「さっき吐いたんだ…………もうおさまったっぽいね」

温かいタオルで顔をふいてくれる手つきが、優しい。

おとなしく、されるがままになりながら、…………疑問しか浮かばない。

…………なんで、この人たちこんなに優しいんだろ?

ひょっとして、元気になったら、すごい金を請求されたりするのかな。
それとも、俺、この二人を同時に相手させられるのかな。
3Pか…………俺、死ぬな。

自分がいつもあえて蓋をしている能力を行使しようか、一瞬迷った。

俺は、人の心が読める。
物心ついたころからある能力だ。

最近は大分コントロールがきくようになり、自分が使いたくないときは、使わずにいれるようになった。

昔は、まわりの心の声が次々に耳に届き、ずいぶんと嫌な思いをしたものだったが。


だけど。
昨日はこれで失敗したんだよな…。
表向きな声しか、拾えなかった。
裏の思いが読めなかった。
完全なミス。


…………やめとこう。

今はまだ。

それに能力を使うと、異常に疲れる。
ただでさえ、体力が、おちまくってるのに、とどめをさされそうだ。  

とりあえず、今日はこのままいさせてもらおう。

頭、いてーや…………。

トロトロと瞼を閉じる。


「……寝た」

「しんどいんだろ。さっき測ったら9度超えしてた」

「薬は?」

「まだ」

「そっか…………」

「ご飯、一応3人分作ったよ」

二人の会話をききながら、俺は、意識を手離した。

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