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キラキラ

第15章 1000回言って

「じゃあ……………辛いね」


どこまで、本気か分からない相葉さんの言葉。
でも、それが例えお愛想でも、今の俺にはしみる。
俺の言葉なんか信じなくてもいい。
でも、寄り添ってくれるだけで救われそうだった。

「うん。辛いのよ……………」


相葉さんが動かないのをいいことに、俺は、しがみついた手を離さなかった。

この温もりをまだ感じたくて。
相葉さんの胸にくっつけた耳から、低く響く相葉さんの声が心地よくて。

相葉さんは、黙って背中をさすったり、軽くたたいたりしてくれて、あやしてくれるようだった。

それが気持ちよくて、うっとり目を閉じた。


すると、しばらくして相葉さんが呟く。


「……………あれ。二宮、なんか熱くない?」


……………泣いたからかな、と相葉さんが少し体を起こして俺を見下ろした。
思わず、見上げると、心配そうな優しい目をした相葉さんの顔が近づいてきて、コツンとおでこ同士が触れあった。


超至近距離。


キスするんじゃないか、と思った。


俺が、自分の発想に、かっと顔が熱くなるのを感じてると、ほらあ……………といって、相葉さんがもう一度俺を抱き込んで、体の温度も確認してる。


「コーフンしすぎたのかな。全体的に熱いよ、おまえ。大丈夫?」


「……………うん」


言われてみれば、頭はフワフワしてる。
でも、これは号泣したからじゃねえの?
俺は、相葉さんにくっつく手をゆるめないまま、返事をした。
別に、俺なんかどうだっていいし。



「……………喉乾いたろ」


なんか、飲むか?と、体を離そうとした相葉さんを、思わずひきとめてしまった。
相葉さんが、驚いたように俺を見つめた。


「?」



「あ……………」



俺は、自分で自分にびっくりする。
何してんだ、俺。
この相葉さんに何してもだめなのに。


相葉さんは、くすりと笑って目を細めた。


「飲み物。とってくるだけだよ。ソファー座ってな」
 

優しく言い含められ、俺は気恥ずかしくなりながら言われた通りにソファーに座った。


相葉さんも俺の横に座り、テーブルからとってきたグラスを渡される。



「はい」
  

「…………ありがとう」


少し氷の溶けたそのグラスは冷たくて。
コクりと飲み込めば、渇ききった体と心に染み渡り、俺は、ふう、とため息をついた。

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