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キラキラ

第15章 1000回言って

「………離…せ!」


「だめ」



「……………」


……………馬鹿力。


離れようとしたけれど、抗えない。

というより、その香りと心地よさに、一気に力がぬけてしまった。

とくとくとなる心臓。
たくましい腕。

温かくて広い胸に、ぎゅっと抱きしめられると、それだけで脚に力が入らなくなる。



「……………二宮」



「……………っう」


泣きながらしがみついた。
この相葉さんは違う。
違う人なのに、悲しいほどに優しさが同じ。


むせび泣く俺を抱きしめて、相葉さんはずっと背中をさすり続けてくれていた。





どれくらい抱き合っていたか。


すん……………と時おり鼻をすするだけになった俺に、相葉さんが静かに


「……………落ち着いた?」


と、聞いた。


俺は、それには答えず、相葉さんの胸に頭を預けたまま、ぽつりと「ねえ」と口を開いた。


「ん?」


「……俺さ……………宇宙人なのよ。実は」



「……………え?(笑)」


相葉さんが、くふっと笑って、ちょっと俺の体を抱く手を緩めて視線をおとしてきたのが分かった。
俺は、うつむいたまま涙と鼻水を相葉さんの胸で、ぐいぐいふいた。


「この状況で冗談いう?」


「冗談じゃないよ」


相葉さんの笑いを含んだ声に、至極真面目に答えたら、相葉さんはまた黙った。


「あのね……………俺は、違う世界から来たの」


「……………うん」


真面目な俺の言葉につられて、相葉さんも真面目に頷いてる。

本当いいやつ。


「だからさ……………帰りたいんだけど、帰れないんだよ」


「……………うん」


「そんだけ」


「……………だから泣いたの?」


「そう」


「そっか」


相葉さんは、ふふっと笑って、もう一度俺をぎゅっと抱き締めた。


「じゃあさ。いつもの二宮はどこいったの?」


「知るかよ」


「……………ふうん」



納得するはずもない絵空事のような話に、つきあってくれる相葉さんの声が優しい。




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