キラキラ
第18章 アッチノキミ
戸惑いながら、エレベーターをおり、潤の部屋の前につくと、内側から待ちかまえていたように扉があき、潤が、いらっしゃい、と、にこりとして迎えてくれた。
「すごーい。以心伝心。たくさん作っちゃったから、翔くん呼ぼうと思ってたんだ」
潤が柔らかく笑う。
キッチンからいい匂いがする。
すぐに分かった。
俺の好きな筑前煮だ。
「お…おう」
何から何までいつもと一緒モードの潤に、俺は、戸惑いをかくせなかった。
潤の大きな瞳が、まっすぐに俺を見つめている。
なに?なんなんだ?
朝からずっと、そらしまくっていた視線はなんだったんだ??
トートバッグをソファにおき、キャップをとる。
キッチン内に立ってる潤を見つめかえすと、潤は、にこにこして、
「晩御飯食べた?」
と、普通に聞いてきた。
「いや…まだ」
「じゃあ、一緒に食べよ。俺もお腹ペコペコなんだ」
そして、てきぱきと二人分のお茶碗をだし、箸をだし、セッティングしてゆく。
俺は、バカみたいに突っ立って、その様をみていた。
さっきまで緊張していた自分はなんだったんだ?
楽屋でヤキモキとして、にのや相葉くんに話を聞いてもらってた時間はなんだったんだ?
俺を華麗にスルーしてたのは……なんだったんだ?
「……しょうくん?」
気づいたらキッチン内に歩み寄り、潤の腕をつかんでいた。
潤の瞳が、きょとんと俺を見上げる。
なんのうしろめたさも読み取れない、綺麗な色。
俺は、……一体……なんだったんだ?
答えがほしくて、そのまま力をこめてひっぱる。潤の体は簡単に俺の腕の中に転がり込んできた。
「しょう……ん」
俺の名を紡ごうとする唇をふさぐ。
性急に舌を突っ込み、深い口づけにもっていくと、潤は嫌がるでもなく、体を震わせて、自分も口をあけ舌をだして応えてきた。
「……?」
そこで、ふとふわりと香る匂いに気づく。
消毒液のような。
俺があまり好きではない病院の匂い。