キラキラ
第19章 バースト3
Jun
静かな空間に、俺の呼吸の音が響く。
「そう…ゆっくり。吸って…………吐いて」
それに寄り添うように響く低い柔らかい声。
閉じた目にはなにも見えないから、暗闇の中その声だけがたよりで。
繋がれた指の温かさと、声に導かれながら、自分の中で静かに燃えているチカラを、自分の意思で
自由に形づくるイメージをもつ。
自分の、ふとした感情の動きにひきずられるようにあらわれては、乱暴に俺を振り回していただけの、瞬間移動と、いう名の俺の能力。
便利そうなイメージをもつ、この不思議なチカラには、長年悩まされてきた。
このチカラのせいで、俺は感情をコントロールせざるをえない子供時代をおくり、孤立することに安心感を覚えるような、ちょっと気の毒な学生生活をおくっていたのだから。
それをかえてくれたのが、……大野兄弟たちとの出会い。
透視能力をもつ智と、念動力をもつ翔。
それに、テレパスの能力をもつ居候のかず。
この三人に、俺は、生まれてはじめて、能力をもつ自分を認めてもらい、受け入れてもらった。
どれだけ嬉しかったか。
突然消えても、驚かれない。
ただそれだけなのに、自分の感情をおさえつける必要がないというだけで、こんなにも開放的な気分になれるなんて。
ただ。
翔曰く、「このままじゃ不便だろう」って。
少しでもコントロールできたら、生活しやすくなるはずだって。
そんな心遣いから、俺は、翔たちの自宅で、時々チカラのコントロールの訓練をしてもらってる。
ふー、ふー、と深呼吸をしながら、ゆらゆらとゆらめく自分の中の能力と向きあい、自分の意思でチカラを動かすトレーニングだ。
今日は、翔が俺の傍らに座り、つきあってくれていた。
どれくらいそうしていたろうか。
「そろそろ終わろうか…?」
「…うん」
「じゃあ……チカラをそっと吹き消すイメージで、自分の中におさめてごらん」
俺は、言われるままに、体の中の熱いものをそっと消した。