
キラキラ
第19章 バースト3
すーっと、頭の中で熱いものが急速に冷えていく感覚。
同時に握られていた手に、ぎゅっと力がこめられて、流れ込んでいた翔のチカラが遮断され、ふわふわした世界からの覚醒を促される。
ぱっと、唐突にあけた瞳に飛び込んできたのは、まぶしく明るい現実世界と、隣にいてくれた翔の優しい笑顔。
「……OK 。上手になってきた」
「……うん、ありがとう」
はあっと安堵のため息をついたら、翔はくすりと、笑った。
繋がれているままの俺の左手と翔の右手。
俺が、集中するなかで、絶妙な頃合いで、俺の能力を引き出すのを手伝ってくれたり、あやうく暴走しかけたら押さえ込んでくれたり、と、翔が、ゆるやかに支えてくれている。
トレーニングの間中、指先から絶えず注がれている翔のチカラは、温かく見守られているようで。
俺の指とは、また違う長い綺麗なそれに委ねるのは、心地よかった。
「喉かわいたなあ」
翔は、絡めていた指を静かに離し、立ち上がってキッチンにむかっていく。
ソファに沈みこんで、そんな彼の後ろ姿を、俺は、ぼんやり見つめていた。
実はこの訓練は結構疲れる。
そりゃ、そうだ。
体力も精神力も使うからみんないつもチカラはあまり使わないっていってるくらいだもの。
それを一定の時間、放出しっぱなしの状態にもっていくわけだから、しんどくもなる。
「ん」
戻ってきた翔から、冷たい麦茶をなみなみと注いだグラスを差し出され、「ありがとう」と、礼をいってうけとった。
「だいぶ、うまくなったよ。もう今は少々驚こうが跳ばないだろ?」
「多分……」
それでも突然消えるわけにはいかないので、学校ではまだまだ気を使って生活しているから、よく分からない。
「チカラのおさめかたは分かってきた感じ?」
「うん」
「そっか。それだけでもよかった」
「……こっちは、あまりよくないよ」
テーブルをはさんだ向こう側で、俺の課題をチェックしていたかずが、笑いを含んだ声をあげた。
「潤くんさあ…こっちのページ、ほぼ間違ってる」
「え?」
「公式覚えてる?」
言いながら、開かれたノートをぴん、と弾かれた。
