キラキラ
第20章 🌟🌟
「サトコさま」
「やだ」
「お戻りください」
「やだ」
大広間からは、バイオリンをはじめとする管弦楽器の音色がきこえてくる。
今日は大の国主催の舞踏会。
父上が招待した、近隣の国々から来たたくさんの客人たちは、優雅に踊ったり、ワインを飲んだりして、楽しんでいるはずであった。
はじめのうちこそ、ホスト国であるがゆえの役目を果たすべく、頑張ってた俺も、だんだんいやになり。
兄上たちが、こぞって、他の国の王女と踊り出したのを横目に化粧直しという名のトイレのため、俺は広間から脱出した。
そうして、そのままミヤのいる控えの間に入り込んだのだ。
黙った俺に、ミヤがもう一度静かに促した。
「……サトコさま」
「……ここがいい」
戻りたくない、と訴える俺に、ミヤは、はあっとため息をついた。
床をみつめてた俺は、ちらっとミヤの表情をうかがい見た。
……怒ってる。
表情でわかる。
そりゃあ……。
一国の姫ぎみがこんな我が儘言ってちゃだめだよ?
充分分かってるよ。
だから、俺だって最初は頑張ったよ?
笑顔をつくって、父上の横でずーっとニコニコしてた。
何人かとは踊ったし。
手も握られて。
嫌だったけど、俺の役目だと思って頑張ったよ。
……だけどさ。
ぶすっとして座ったまま動かない俺の正面に片膝をつき、ミヤは、ゆっくり言い聞かせてきた。
「分かりますよね? 招待した側の人間が、別室にこんなに長い時間隠れててはいけない」
ミヤの声のトーンでわかる。
これは、ものすごーく俺にあきれてる。
分かってるってば。
でも……だって。
「だって。つまんねーもん」
「つまんないって……」
それに。
「……それに、あいつが来たもん」
「あいつって?」
「……相の国の」
ミヤは、ああ……例の、というように眉をひそめた。
相の国のマサキ王子は、その物腰の柔らかさと、明るさとなつっこさで、父上と母上のお気に入りだ。
したがって、普通の王子が出入りできないような場所まで、入り込んでくることができる。
「おまえ一人にしときたくない」
顔をあげて、ミヤの顔をじっと見つめた。