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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~


Kazu



真夏の昼下がりに、外を歩くなんて、普段はまずない。


陽炎のように立ち上るアスファルトからの熱気に、息がつまりそうになるから。

そして、その暑さにあたり、そのままパッタリ倒れる可能性も俺に限ってはゼロじゃないのが現実。
もしもそうなれば、周りの迷惑になるだけだし、洒落にならない。
だからこそ体力のない俺は、真夏の昼間は、なるべく家から出ないようにしてるくらいなのだ。


でも……


でも、今日はなんだかうきうきした気分が、力に変わってる感じ。
足取りも心なしか軽い。


ジリジリと照りつける太陽の光が、痛いくらいに肌をさすけれど……。


「ふふ……痛いな」


なんて、笑って呟きながら、むき出しの白い肌をさする余裕すらあったりする。


このうきうきとした気分の原因の八割は、きっとさっきの翔さんと潤くん。

能力なんか使わなくたって、見てたら分かった。
いとおしく、潤くんの髪に触れる翔さんの瞳。
恥ずかしそうに、だけど泣きそうな顔で、されるがままの潤くんの表情。


なにこれ。
相思相愛じゃん。もしかして。


直感で感じて、そのまましばらく観察してたけど、見てたらだんだんドキドキしてきた。

これ……この二人上手くいけばくっつけるかも。

そして、そのためには、俺は邪魔だな、と気がついた。
二人きりにしたら、翔さんあたりが動きそうだもんね。

そう思い、煽るだけ煽って、家をとりあえずでることにしたのだ。



……頑張れ。翔さん。



思い出し笑いをこらえながら、てくてくと歩いた。


最寄り駅に到着し、リュックを後ろ手にさぐって定期券を引っ張り出す。
ピッという軽快な電子音とともに、改札の中へ。

ちょうど滑り込んできた電車に乗った。


「ふう……」


キャップを脱ぎ、汗で額にはりつく髪をかきあげる。
寒すぎるくらいの冷房も、今は心地よく、天井から吹いてくる人工の風に顔をむけて目を閉じた。


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