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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~


平日の昼間の電車は、ガラガラだ。
空いてる席に座り、向かいの外の景色を眺めた。
夏の太陽にさらされた街は、眩しいくらいに明るい。

ガタンガタンという、揺れに身を委ねながら、ぼんやりと、自分のテンションのあと二割を占める人物を思い浮かべる。


うまく部活帰りをつかまえられるかな。
 
ね、相葉くん?


ふふ……と口角があがる。


茶色く染めたサラサラの髪。
つぶらな瞳はキラキラしてて、笑うとなくなる目が優しい。
外見は、一見チャラそうだけど、話をすると驚くほどピュアで真面目なところは、潤くんと同じだ。
潤くんの話だと、学校ではバスケ部に在籍してて、夏休みも毎日学校に行ってるってきいた。

初対面から数えて、まだ片手で足りるくらいしか会ったことはないけれど、その一回一回が、濃密で。
そのどれもが、潤くんと一緒に大野家に遊びに来てくれた時のことだが、もういいよ、というくらいなつかれた。

かず、かずって。

なんだろうなあ……大型犬に尻尾をふられて顔を舐められる感覚。
勉強を教えたり、一緒にゲームしたりするくらいのことだったんだけど、その間ずーっと、好き! 好き! ってすっげーシグナルを感じたんだよね。


俺の直感はたいていあたるわけで、多分相葉くんは俺に好意をもってる…って思ってる。

友達としてなのか、そうじゃないのかはおいといて、だ。

ちゃんとした真実を知りたきゃ、能力使って読めば早いんだけど……。

俺は、基本、能力は使わない。
テレパスの方は、連絡手段に時々使うけど、心を読むことはしない。
昔、痛い目をみてるから、あれ以来封印してる。


特に自分に関してはなおさら使う気はない。


だから、相葉くんの気持ちもほんとのところは分からないんだよね。


ぼんやりとさまよわせてた視線を、足元におとす。

少し汚れたスニーカーの、爪先をみつめた。


だけど……こんな自分と過ごすことに喜びを表してくれる人に会うことは、単純に嬉しいし、楽しみだった。

会いに来た俺を見て、相葉くんは、どんな顔をしてくれるだろう。

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