キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
かずの顎を少し持ち上げて、ゆっくり顔を近づけると、かずはそっと瞳を閉じた。
「……」
しっとりと唇を重ねる。
何回か啄んで。
ちょっとだけ舌を探って。
ちゅっと吸い上げてやって。
「……ん……」
激しくなるまえに……唇を離した。
閉じられてた瞳がゆっくりと開き、
「はあ……なんか、ドキドキした」
と、上気した頬を両手でおさえて、かずは可愛いことをいった。
「……そりゃあ、よかった」
俺も。
ちょっとドキドキした。
なんだろうな。
悲壮感に満ちたかずに、求められた時のみの関係だったから。
こんな風に、笑顔のかずと口づけを交わすことはなかったから、かな。
これ、お互いちょっと罪悪感あるやつだ。
だけど、もう、かずとキスすることはないだろう。
「ありがとう、智さん」
「……ん」
娘を嫁に出すときって、こんな感じだろうか。
嬉しいんだけど、ちょっと寂しい気がしてきた。
どうかしてるな、俺。
かずが、ペコリと礼をして、部屋を出ていく。
「おやすみ」
と、ひらひらと手をふり、傍らのスマホを手に取った。
…まだ起きてるかな……
履歴に指をすべらし、コール。
『……どうした?』
すぐにでた。
低くて。
甘くて。
俺の愛する人の声。
「……ちょっと。声が聞きたくなって」
電話の向こうで、嬉しそうに笑う声がした。
みんなみんな。
俺の大事な人たち、みんな。
笑顔になれ。
……幸せであれ。
end