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キラキラ

第23章 🌟🌟🌟


「失礼します」

俺たちの傍らで、ティーポットを手にした召し使いが、繊細なつくりのカップに、琥珀色の紅茶を静かに注ぐ。
瞬間、ふわりと、とてもいい香りがして、思わず目が釘付けになった。

これまでにない不思議な香りに、すすめられるままに口をつけた。

「……美味し」

思わず口をつく言葉に、ショウ王子は破顔した。

「よかった。気に入っていただけましたか」

そういって自分も口をつけた。

「……今度、あなたの国にお邪魔する機会があったら、お土産にお持ちしようと思ってたんです」

と、言って、カップをそっとソーサーに戻す。

「……林檎の香りがするんですね」

爽やかな林檎の香りと、甘酸っぱい後味がとても俺の好みだった。

「フレーバーティーっていいます。茶葉に林檎の香りをつけたもので、これはアップルティーです」

サトコ様は、紅茶がお好きだと聞いていたから……、と、はにかむショウ王子を、少し広い心で見てる自分に気づく。
あれだけ、面白くないやつだ、とこきおろしていたけれど。

うん。ちょっと可愛いところもあるな。





よく笑い、よくしゃべる男だった。
俺の国にいたのは、別人だったんじゃねーの?というくらい、ハツラツとしていて。

俺もいつになく、作り笑いじゃない笑顔で、話をすることができた。

ようするに、こいつは頭がいいやつなのだ。
良すぎるから、話題もかたくなる。
そして、気を使いすぎて、ぎこちなくなるのだろう。

二杯目の紅茶が空になりそうなのを見計らい、そろそろ広間に戻りませんか、と声をかけようとしたら、ショウ王子が、ふと真顔になった。

「……サトコ様は、ご結婚を考えていらっしゃる人がいるんですか」

「……」

きた。
この話題。
最近、この手の質問が増えたよな。

俺は、ふふっと肩をすくめ、「さあ……?」と、言葉を濁した。

「……僕は。あなたにこの国に来てほしいと思ってます」

「……それは国王陛下の、ご意思でしょう?」

「いえ。僕の意思、です」

キッパリと言われて、俺は、口ごもった。
ジュンみたいな、チャラチャラしたやつは、どうとでもあしらえるけど、こういう真面目なやつは、たちが悪い。

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